悟りを開かれてからの四十五年間、伝道の旅を続けられ、相手を選ばず時や場所をも選ばず教化を施されたブッダでしたが、故郷カピラヴァスツへと向かう旅の途中、チュンダという鍛治工のもてなしたキノコ料理が原因で、疫病のような病いにかかり、激しい腹痛を訴えられ、ついに倒れてしまわれました。 自身の死期を悟られたブッダは、沙羅双樹の下で横になり、沈んでいく夕陽を眺めながら、静かにその時を待たれたといいます。 苦行林を出たとき、村娘スジャータに施された乳粥が、悟りのための大きな功徳を為したのと同じく、鍛治工チュンダの施したキノコ料理が、完全に煩悩の消え去った無上の悟りに達するための、大きな功徳を為すのだと、ブッダは語られ、チュンダを思い遣られました。 生きること、老いること、病いになることと同様に、死ぬこともまた、あるがままに受け入れるべきものであるとして、ブッダの姿はそれまでと同様に、堂々として威厳に満ちたものであったといいます。 偉大なる師を失うことを嘆き悲しむ弟子たちに、ブッダは最期の言葉を残されました。 「自灯明、法灯明・・・ 自らを灯とし、他のものを灯としてはいけない。 自らを灯とし、仏法を灯としなさい。 自らを拠り所とし、他のものを拠り所として生きてはいけない。 自らを拠り所とし、仏法を拠り所として生きていきなさい。」 |