この世の中で人間が生きていくためには、何らかの「拠り所」が必要です。
仕事、趣味、嗜好、主義、信条、思想、信仰、組織、地位、財産など。
実際に誰もが何らかの拠り所を持ち、それを信じ、生きているはずです。

何かを強く信じるということは、力を持ちます。
それが何に対してであろうとも、信じれば信じるほど、その力は強いものになります。
しかし、その力が良い方向に働くこともあれば、悪い方向にも働くことがあるのです。

重要なのは、何を拠り所とし、それをどう信じるかということなのです。
ただ自分の思い込みでなんとなく信じれるようなことではなく、疑いに疑い、疑い抜いても信じざるを得ないことを、正しく信じるべきだと、ブッダは説いています。
いつも不安定に揺れ動いている人間の心には、いつでもどこでも揺らぐことのない、確かな真実の拠り所が必要なのだと、ブッダは説いているのです。


まずは自分自身を信じて、自分自身を拠り所とすることが大前提です。
あまりにも当然すぎることですが、自分の存在無しには自分の世界はありえません。
自分自身を差し置いて他の何かを拠り所とするのは、過剰な依存であり、自己逃避です。

自分と同様に大切だと思えることはあっても、自分以上に何かを大切だと思うことは、決して良いことではありません。権威やカリスマや大多数に対して、無条件に従うような生き方は、とても尊厳のある生き方であるとはいえません。他のために自らを尽くすことはあっても、自分を犠牲にするという思いが、必ずしも他のためであるとはいいきれません。

基本はいつも「私一人」です。かけがえのない「自分自身」なのです。
他人には成り変わりようがなく。自分に成り変わってもらえることもありません。
まずは自分自身の存在を、自分の世界の原点とし、自らの拠り所としなければいけません。


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