報恩講とは、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のご命日を機縁として営まれる、
浄土真宗の最も大切な年中行事です。
南無阿弥陀仏の教えをお伝えくださった先達への
「 ご恩に報いる集い( 講 )」という意味で「 報恩講( ほうおんこう )」といわれます。
真宗大谷派(お東)では、親鸞聖人の祥月命日である旧暦の11月28日を、新暦になってもそのままの日付で扱い、浄土真宗本願寺派(お西)では、旧暦を新暦に換算した日付をとって1月16日を、聖人のご命日としています。
これらのご命日を最終日として、お東では11月21日から、お西では1月9日からの1週間に渡って、全国各地のご門徒方や真宗末寺の僧侶方がそれぞれのご本山に集まり、宗派ごとに年中行事のご法要が営まれます。これを「 御正忌(ごしょうき)報恩講 」といいます。
浄土真宗本願寺派の末寺(系列所属寺院)では、1月16日の祥月命日は、
ご本山で行われる「 御正忌 」を優先して参詣するのが、旧来からの習わしです。
そのため、ご本山でお勤めされる「 御正忌 」に重ならないように、10月下旬から12月上旬にかけての日程を調整して、近隣地域の互助関係にある寺院が、互いの報恩講をお勤めし合うこともまた、旧来からの習わしとなっています。
正式のご命日より繰り上げてお勤めするので、
これを「 繰上(くりあげ)報恩講 」といいます。
浄土真宗本願寺派の富山別院を中心として、富山県東部の寺院で組織される「 富山教区 」の、富山市北部地区の寺院11ケ寺で構成される「 富山北組 」に所属する慶集寺は、例年11月8日を組内の取り決め日として、これまでは自坊の「 報恩講 」をお勤めしてきました。
晩秋のこの日は、ほんの数年前まで、
ずっと変わらずにつづくかのように思われた、特別な1日でした。
小さなお寺が満堂になるほどに沢山の人々が参詣されて
組内の僧侶方が一同にそろって本願寺派の正式の作法でお勤めをし
特別にお呼びした布教師の先生のお説教をご聴聞した後に
地域のご婦人方でつくっていただいた
郷土料理のいとこ煮や 精進弁当のお斎をいただいて
年に一度の賑いをみせていたのが かつての「 報恩講 」の風景でした
けれどもここ数年の間に、お参りされる方々も次第に減少していき、
かつてあった「 お寺のおまつり 」の活気は、
いまとなっては遠い過去のこととなってしまいました。
これは何も慶集寺だけに限ったことではなく、
全国に約2万ケ寺あるといわれる浄土真宗系宗派の所属寺院の、そのほとんどすべてが、
例年の報恩講を、同様の状況のなかで、かろうじてお勤めしているようです。
では、どうしてこのような状況になってしまったのか?
それには、以下の3つの理由が考えられます。
(1)
これまでは地域に支えられてあった寺院が、
これまでにあった地域住民の結束と協力を集めることが、
社会状況として難しくなってきているため
(2)
三世代同居の家庭が減少し、核家族が一般化して、
これまでに継承されてきた仏事の習慣が、
家内の世代間で伝わりにくくなっているため
(3)
各種サークルやカルチャー教室、医療福祉施設など、
人の集まりが多様に細分化してきたことに伴って、
お寺という場の求心力が失われてきているため
(1)地縁(2)血縁(3)社縁 のあり方が大きく変わってしまって、
かつてのような「 報恩講 」が、もうお勤めできなくなってきている現状です。
このことは、直視せざるを得ない、現実です。
だからこそ、「 南 無 阿 弥 陀 仏 を まつ( 祀 )る 寺 」という大切な場所をまもりつづけ、
寺院運営という「 まつりごと( 政 )」を、次世代へとつなげていくためには、
新しい時代の「 お寺のまつり( 祭 )」を、つくりなおすことが、必要なのだと思います。
明治期に古民家を移築して建立され、築100年を過ぎて今にある「 慶集寺本堂 」
そして、本願寺から寺号が免許された享保3年(1718)より代々護持されてきた「 木像本尊 」
永きにわたり慶集寺の中心にあって、時代を越えて多くの人々に仰ぎ拝まれてきたご本尊が、
平成28年11月3日( 文化の日・祝日 )午後1時より本堂にて執り行われる
今年度の「 慶 集 寺 報 恩 講 」を区切りとして、
宮殿荘厳から寺の境内を出られ、富山市・丸の内の「 木本仏具店 」へとお遷りになられます。
そして1年後には、本堂を解体し、2年後には、同じ場所に新しいお堂を建築して、
慶集寺300周年にあたる 平成30年(2018)には、
仏具店で修復されたご本尊を、再び慶集寺にお戻しする計画です。
新しくて懐かしい、これからの「 報恩講 」のはじまる場所を、
新しくて懐かしい、これからの「 慶集寺 」を、
未来に向けて、再生したいと思います。
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