◉苦しみと楽しみはワンセット
のっけから「人生は苦である」なんて言い切ってしまう仏教は、なんて嫌なことを言う、元も子もない教えだろうと思われるかもしれません。仏教にネガティブなイメージを感じられるかもしれません。人生は楽しく明るくもっと前向きに、ポジティブに生きる方がいいに決まっていると思われるかもしれません。
もちろん、楽しみがあるからこそ、ひとは生きていたいと思うのでしょう。けれども楽しみばかりの人生はないのも、また現実なのです。
仏教が伝えようとしているのは、楽しみと苦しみは必ずワンセットだということです。苦しみがあるから楽しみもあるし、楽しみには、それにあわせて必ず苦しみもあります。陰と陽のように、ネガティブがあればポジティブがあるように、苦と楽は2つで1つとして成り立つものなのです。
私たちの生きる世界は、勝ち負けや損得や、善悪や好き嫌いがあって、それらは相互に寄りかかりながら存在しています。どちらか1つでは成り立ちません。2つがセットになっているから成り立つのです。どちらも受け止めなければいけないものとしてあるのです。
連戦連勝で無敵であることが、面白いとは思えません。勝ったり負けたりしながらゲームは楽しむものでしょう。損ばかりではなく、得ばかりということもあり得ません。損したり得したりしながら、それに一喜一憂しているということなのでしょう。
思うようにしたいと思うことが、自分の思うようにはならないことから、苦しみが生じてしまうというのは、なるほどそうだと思います。
けれども考え方によっては、思うようにならないことを、工夫したり、努力したり、協力したりして何とかするところに、楽しさや面白さがあるようにも思われます。
苦しみを乗りこえて、楽しみに転じることも、出来るのだと思います。
苦しみを楽しみにするなんて、とてもじゃないけど無理なこともあるでしょう。
けれどもその思いを、人生の「味わい」とすることは、出来ないでしょうか。
苦(くる)しいという字は、苦(にが)いとも読めます。
辛(つら)いという字は、辛(から)いとも読めます。
苦しいことも辛いことも、人生になくてはならない味なのだと、
思うしかないのかもしれません。
人生楽ありゃ苦もあるさ、という時代劇の歌がありましたが、ほんとにそうだなあと思います。
歌でもうたってやり過ごすしかないようなときも、人生にはあるのです。