◉四苦八苦の世間

生老病死の「四苦」にもう4つの苦を足して、計8つで「四苦八苦(しくはっく)」です。私たちの人生は、四苦八苦しながら生きていかなければいけないということです。

生老病死の「四苦」に続いて、「愛別離苦(あいべつりく)」が説かれます。これは、愛する者とも別れなければいけないという苦しみです。ずっと一緒にいたいと思っていても、元々に各々が別々の存在として生まれてきたのですから、ずっと一緒にいられるわけではありません。

また別の視点で「愛別離苦」を見るならば、昨日まで愛していた人が今日には愛する人ではなくなってしまうという苦しみもあるでしょう。それでも一緒にいなければいけないという苦しみだって、あるかもしれません。

「愛別離苦」の次には「怨憎会苦(おんぞうえく)」が説かれます。怨みや憎しみを感じる者とも、会わなければいけないという苦しみです。

職場であっても、学校であっても、地域であっても、好きな人ばかりだというのであれば言うことはないのですが、現実にはそうはいきません。ウマが合わないソリが合わない、苦手な人というのは、誰にでもいるものだと思います。

嫌なことは避けて通りたいものです。快く心地いいことを、誰でも求めるものだと思います。けれどもそれが思いのままになるということはありません。求めるものがすべて得られるということはありません。そこに生じる苦しみを「求不得苦(ぐふとっく)」といいます。

欲を少なくして足ることを知る(少欲知足)がよいことは頭では分かっていても、抑えきれない衝動にもっともっとと求めてしまうことがあるでしょう。これで満足としばらくは満ち足りていても、すぐに何か物足りないような気分になって、また求め始めるということがあるでしょう。わかっているけどやめられない、そういうことがあると思います。

四苦八苦の最後にある「五蘊盛苦(ごうんじょうく)」とは、かいつまんで言うなら、私たちの心と体はいつも盛んに揺れ動いて、仕方がないということです。苦しみの原因となることが分かっているのに、その疼きを止められないのです。自分の心と体であっても、自分の思うようにはコントロールできないのです。

思うようにいかないもどかしさから、どうしようなく、心に苦しみが生じてしまいます。お釈迦さまは、思いのままに生きられるわけではない自分自身の人生を、その現実を、まずは直視しなさいと示されたのです。

 

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