ひとがこの世に生まれてくるには、必ず2人のひとが必要です。それは1人の男性と1人の女性と言った方が良いかもしれません。どんなひとにも、この世に生まれるための無くてはならないご縁として、必ず2人の産みの親がいます。
私という1人には、父母という2人のひとと、祖父母という4人のひとが必ずいますが、4人の祖父母にも同じように両親がいることを思うと、私には8人の曾祖父母(そうそふぼ)がいるということになります。
4人の祖父母であれば、生活を共にしたことがあったり、年に何度か会う機会があったり、写真に遺されていたり、どんな人だったか聞いていたり、名前くらいは分かるといった人もいるかもしれません。しかし、8人の曾祖父母にもなると、その像はかなりぼやけてしまうのではないでしょうか。
その8人の曾祖父母にも、必ず父と母とがいます。8人の曾祖父母が生まれるためには、16人のひとたちがいるのです。このひとたちを高祖父母(こうそふぼ)と言うそうです。
その16人のひとたちが生まれる先にも、32人のひとたちがいるはずです。5代先にもなると「ご先祖さま」と言ってもよいくらいでしょうか。ここまでくると余程の伝説的な人物でもなければ、どんな名前で、どんな姿で、どんな人生を送ったか、なんてことはなかなか伝えられることではないかもしれません。
32人のご先祖さまでそのつながりが止まることはなく、その先には64人。その先には128人。その先には256人。そのまた先には512人のご先祖さまが、必ずいます。
更に過去へとさかのぼっていけば、倍々になってご先祖さまの数は増えていきます。それは果てしなく続いていって、永遠にひろがっていきます。
どのご先祖さまの1人がいなかったとしても、今ここにいる私は、生まれてきません。今ここにいる私は、永遠のいのちのつながりの中に生まれてきた、たった1つのいのちなのです。
永遠のいのちのつながりの先に、私たち1人1人が、今生きています。
いのちのひとつひとつは、遡ればすべてがどこかで、つながっています。
photograph:Hajime Honda