【 第九条 】
信心こそが根本です
何ごとにも信心(まことのこころ)が大切です。何ごとを為すにあたっても、まごころをもってするべきです。
善いことも悪いことも、成功するのも失敗するのも、かならず誠実であるかどうかにかかっているのです。
人びとがお互いにまごころをもって事にあたったならば、どんなことでも成し遂げられないことはないはずです。
これに反して人々が誠実さを失ってしまうならば、あらゆる事柄は、結局のところ失敗してしまうものです。
真実信心の教え(南無阿弥陀仏)を、よくよく聴聞しましょう。
第九条に説かれる「信(まこと)」とは儒教的な意味での「信」すなわち「誠実さ」であると同時に、仏教的な意味での「信」すなわち浄土真宗で最も根本とされるところの「信心」であるといただくべきでしょう。
人と人との信頼関係は、移ろいやすいものです。各々が〈南無阿弥陀仏〉の信心を確かにいただくことで、お互いを許し合い、信じ合える人間関係が育まれていくことを、心から信じようと思います。
【 十七条憲法・第九条 】
[原文]
九曰、信是義本。毎事有信。其善悪成敗、要在于信。群臣共信、何事不成。群臣无信、萬事悉敗。
[書き下し文]
九に曰く、信はこれ義の本なり。事ごとに信あるべし。それ善悪成敗はかならず信にあり。群臣とも信あるときは、何事か成らざらん。群臣信なきときは、万事ことごとくに敗れん。
[現代語訳]
まこと〈信〉は人の道〈義〉の根本である。何ごとをなすにあたっても、まごころをもってすべきである。善いことも悪いことも、成功するのも失敗するのも、かならずこのまごころがあるかどうかにかかっているのである。人びとがたがいにまごころをもって事にあたったならば、どんなことでも成しとげられないことはない。これに反して人びとにまごころがなければ、あらゆることがらがみな失敗してしまうであろう。
[英語訳]
9. Sincerity is the basis of righteousness. All things should be done with sincerity. Good and bad, success and failure depend on whether there is sincerity or not. When officials maintain sincerity, what is there that cannot be accomplished? When officials do not maintain sincerity, everything will fail without exception.
出典:中村元 著『 聖徳太子 地球志向的視点から 』(東京書籍)THE SEVENTEEN-ARTICLE CONSTITUTION by Prince Shoutoku Translated into English by Hajime Nakamura