十 七 条 心 得 (十七条憲法 原文 等)

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【 第五条 】
 我欲に気をつけて

寺院施設に住まいしてその仕事をする者は、生活を慎み、物欲を控え、社会的にある様々な求めに応えるようにしなければいけません。

寺院への依頼や相談は、多岐に渡ってあるものです。仏事に関することだけでなく、精神面や生活面などにも様々な問題はあって、それが無くなるということはありません。

けれども世間のありさまを見渡すと、寺院の仕事をする人々の中にも、それを営利目的の商売かのように考えることを当たり前にして「布施(他者に施すこと)」の本来の意味を履違え、社会に誤った認識を与えていることもあるようです。

そんなことだと、財産のある人からの相談や依頼は丁寧に受けたとしても、生活にも困難な人からの相談や依頼は、いい加減なものとなってしまいます。

これでは、さまざまな問題を現実に抱えている人々は、寺院や僧侶に何を求めていいのかわからなくなって、社会における仏教の必要性が疑われることにもなってしまいます。

 

人の欲にはきりが無く、満足を知ることは出来ないものです。

寺院施設の管理とその運営を任されているかぎりは、社会や他者のためになるように、非営利の宗教活動として、それに取り組まなければいけません。

無理に禁欲的になって、他者や社会との関わり合いを絶ってしまうことがいいわけではありません。浄土真宗は在家仏教なのですから、さまざまなご縁のなかで自らの役割を勤めさせていただくことこそ、仏道修行だと思って取り組むべきでしょう。

日常生活のなかで「縁起の道理」に気付きを深めさせていただくことこそ、浄土真宗の醍醐味なのだと思います。

 

 

【 十七条憲法・第五条 】

[原文]
五曰、絶饗棄欲、明辨訴訟。其百姓之訟、一百千事。一日尚爾、況乎累歳。頃治訟者、得利爲常、見賄廳讞。便有財之訟、如右投水。乏者之訴、似水投石。是以貧民、則不知所由。臣道亦於焉闕。

[書き下し文]
五に曰く、あじわいのむさぼり<餐>を絶ち、たからのほしみ<欲>を棄(す)てて、明らかに訴訟(うったえ)を弁(さだ)めよ。それ百姓の訟(うったえ)は、一日に千事あり。一日すらなお爾(しか)るを、いわんや歳(とし)を累(かさ)ねてをや。このごろ訟を治むる者、利を得るを常とし、賄(まいない)を見てはことわりもうすを聴く。すなわち財のあるものの訟は、石をもって水に投ぐるがごとし。乏しきのものの訟は、水をもって石に投ぐるに似たり。ここをもって、貧しき民は所由(せんすべ)を知らず。臣道またここにかく。

[現代語訳]
役人たちは飲み食いの貪りをやめ、物質的な欲をすてて、人民の訴訟を明白に裁かなければならない。人民のなす訴えは、一日に千軒にも及ぶほど多くあるものである。一日でさえそうであるのに、まして一年なり二年なりと、年を重ねてゆくならば、その数は測り知れないほど多くなる。このごろのありさまを見ると、訴訟を取り扱う役人たちは私利私欲を図るのがあたりまえとなって、賄賂を取って当事者の言い分をきいて、裁きをつけてしまう。だから財産のある人の訴えは、石を水の中に入れるようにたやすく目的を達成し、反対に貧乏な人の訴えは、水を石に投げかけるように、とても聴き入れられない。こういうわけであるから、貧乏人は何をたよりにしてよいのか、さっぱりわからなくなってしまう。こんなことでは、君に使える官たる者の道が欠けてくるのである。

[英語訳]
5. In hearing judicial cases of common people judges should banish avaricious desires and give up their own inter-ests. Deal impartially with the suits brought by the people. Of the cases to be tried there are a thousand each day. If so many in one day, there will be immense numbers of disputes to be settled in the passage of years. Nowadays it is alleged that some judges seek their own profit, and attend to the cases after having taken bribes, which has given rise to the saying : ‘The suits of the rich men are like a stone cast into the pond, whereas the suits of the poor men are like water thrown upon a rock.’ Hence the poor people do not know where to turn. Such a state of affairs, if brought about, would mean a deficiency in the duty of officials.

出典:中村元 著『 聖徳太子 地球志向的視点から 』(東京書籍)THE SEVENTEEN-ARTICLE CONSTITUTION by Prince Shoutoku Translated into English by Hajime Nakamura

 

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