【 第十四条 】
人と自分を比べないように
他者との関係のなかで、嫉妬心を持たないようにしましょう。
自分が妬めば、人もまた自分を妬みます。嫉妬のもたらす憂いは際限がありません。
それゆえに、他人が自分よりも勝っていると思うときにはなかなかそれをよろこべないし、自分より優れていると感じるときには、羨み妬むことさえある私たちです。
南無阿弥陀仏は誰のものでもありません。
異なる者とも心を一つになれるのがお念仏です。念仏者が共に心を一つにすることをしなければ、どうして真実の信心を慶ぶことができるでしょうか。
人間には、自尊心とともに、競争心があります。私たちはそれぞれに、優越感と劣等感の間を、揺れ動きながら生きています。比べようがないことを、自分の色眼鏡と物差しで、偏見のままに比べている私たちです。
人は人。自分は自分。それぞれの個性や能力に応じた役割があるはずです。人それぞれの能力は互いに活かしあうことで、広く社会のためにもなるはずです。
【 十七条憲法・第十四条 】
[原文]
十四曰、群臣百寮、無有嫉妬。我既嫉人、々亦嫉我。嫉妬之患、不知其極。所以、智勝於己則不悦。才優於己則嫉妬。是以、五百之乃今遇賢。千載以難待一聖。其不得賢聖。何以治國。
[書き下し文]
十四に曰く、群臣百寮(ぐんしんひゃくりょう)、嫉妬あることなかれ。われすでに人を嫉(うらや)むときは、人またわれを嫉む。嫉妬の患(うれ)え、その極(きわまり)を知らず。このゆえに、智おのれに勝るときは悦ばず。才おのれに優るときは嫉妬(ねた)む。ここをもって、五百歳にしていまし今賢に遇(あ)うとも、千載にしてひとりの聖を持つことに難(かた)し。それ賢聖を得ずば、何をもってか国を治めん。
[現代語訳]
もろもろの官吏は、他人を嫉妬してはならない。自分が他人を嫉めば、他人もまた自分を嫉む。そうして嫉妬の憂いは際限のないものである。だから、他人の智識が自分よりもすぐれているとそれを悦ばないし、また他人の才能が自分よりも優っていると、それを嫉み妬むものである。このゆえに、五百年をへだてて賢人が世に出ても、また千年たってから聖人が世に現れても、それを斥けるならば、ついに賢人・聖人を得ることはむずかしいであろう。もしも賢人・聖人を得ることができないならば、どうして国を治めることができようか。
[英語訳]
14. All officials, high and low, should beware of jealousy. If you are jealous of others, others in turn will be jealous of you and so is perpetuated a vicious circle. So if we find others excel us in intelligence, we are not pleased ; if we find they surpass us in ability, we become envious. Really wise persons seldom appear in this world …… possibly one wise man in five centuries, hardly one sage in ten centuries. Without securing wise men and sages, how shall the country be governed in good order?
出典:中村元 著『 聖徳太子 地球志向的視点から 』(東京書籍)THE SEVENTEEN-ARTICLE CONSTITUTION by Prince Shoutoku Translated into English by Hajime Nakamura