【 第六条 】
世間で言われるものごとの善悪は、その時代や社会の常識に依るところが多く、必ずしも固定的で絶対的なものであるとはいえません。けれども先人より教えられてきた「よいこと」そして「わるいこと」には、古来より現在にまで伝えられてきただけの経験則があります。
因果応報。自業自得。善因楽果。悪因苦果。自分の為した行いに応じて起きるその報いは、よいこともわるいことも、他でもない自分が受け入れることになります。だからこそ、人が「よいこと」を為したと思えば、これをかくさずに明らかにして評価して、また人が「わるいこと」を為したのを見ればそれを注意して、よい方向へと向けていかなければいけません。
心にもないお世辞や嘘偽りは、良好な人間関係に問題を起こす「わるいこと」です。また、ひとの機嫌を取って気にいられようと媚びへつらうような者は、二枚舌や悪口、陰口を言ってはばかることがありません。
そのような人は、他者に対して誠実ではなく、思い遣りの気持ちに欠けているようです。これこそが、世の中に起きる混乱の、根本的な原因なのです。
【 十七条憲法・第六条 】
六曰、懲惡勸善、古之良典。是以无匿人善、見悪必匡。其諂詐者、則爲覆二國家之利器、爲絶人民之鋒劔。亦佞媚者、對上則好説下過、逢下則誹謗上失。其如此人、皆无忠於君、无仁於民。是大亂之本也。
ものごとの善悪は、それを判断する人の立場や価値基準や、あるいは感覚や思想に拠るものであって、簡単に決めつけることのできないことです。
しかしながら、他者に対する思い遣りの心〈真心〉が肝心であって、その心に裏表がないことこそが、大切なのだと思います。