2024年1月1日午後4時10分、いただいた年賀状を見ながら返信の宛先を書いていた時でした。1回目の揺れに反応して家族が集まってきたすぐ後、2回目の大きな横揺れに視界のすべてが揺れ動きました。それはこれまでに経験したことのないような長さで続く大きな地震でした。
本棚の本や置物が次々に落ちていくなかで家族全員のスマートフォンから警報が鳴り響き、テレビをつけると能登半島で震度7強の大地震が発生したことをアナウンサーが切迫した表情で告げていました。大津波警報の文字が画面に大きく映し出されて「いますぐ逃げてください!」と緊急事態を知らせる普段テレビでは聞くことの無い声。富山湾沿岸の港町・東岩瀬に住む私たちにとって、3~5メートルの高さの津波を予告するその警報は、一刻も早く行動に移す必要を迫るもので、そこから先はとにかく心中「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」と称えながら、高齢の母と帰省中だった姉2人と姪を迎えにいき、1台の車に9人を乗せて地域の避難所に駆け込みました。
幸いに津波の高さは予報されたほどではなく、東岩瀬の地域に海水が浸食するようなことはなかったのですが、いつまた大きな地震と大津波が来るかもわからない不安の中で、暖房のない体育館で6時間を過ごしました。大津波警報から津波警報に変わったことを確認して、家族全員で自宅へ戻り、慶集寺の状況を確認。免震構造になっている新御堂に被害はなく、御本尊と木彫レリーフの無事が分かった時には今までには感じることのない思いで合掌、「南無阿弥陀仏」と声にしました。
そして、納骨壇で多数お預かりしている御骨瓶が全て無事だったことを確認した時は、心底ほっとしました。境内地にある灯籠や近隣のブロック塀が倒れていたり、琳空館ギャラリーの展示や仏具が落下していたりはしましたが、大きな損害となるようなものではなく、本当に不幸中の幸いだったと思います。
もしも6年前に古い本堂を解体していなかったとしたら、古民家の改築を何度も重ねて築百数十年を越えていたその建物は、間違いなく倒壊していたと思います。慶集寺に300年前より受け継がれる木像御本尊も、その瓦屋根の下敷きになっていたのだと思います。
そんな元旦から、今日で1週間が経ちました。報道される能登地方の被害状況を知るにつけ、本当に胸が締め付けられるような思いがします。余震の回数は日毎に少なくなってはきていますが、雪雲の下の現地を思うと、本当に心苦しく感じます。まずはこの余震が収まり、少しでも安心できるようになることを、ただ願うばかりです。
新年の幕開けは忘れられない1日で始まりましたが、これを機として、人生の次なる段階へと移り変わったことを、覚悟しなければいけないと思っています。自分に出来ることが限られていることは認めざるを得ませんが、自分の役割を精一杯に勤めることで、私の人生、ご縁の方々の人生、社会全体、世界全体が、少しでもよりよいものになっていくように。二心なく一心に願い、今ここの自分自身を生きていこうと思います。
どんな状況にあっても、まずは自らの心を落ち着かせることが大切であることを実感しました。そのためにも、「南無阿弥陀仏」の念仏は、真の頼りであることを悟りました。この感覚を忘れずに、2024年からの人生を生き抜こうと思います。
1月14日(日)は、親鸞聖人のご命日をご縁にお勤めする
今年最初の年中行事「御正忌 報恩講」です。
御正忌 報恩講(ごしょうき ほうおんこう)
日時:令和6年 1月 14日(日曜日)
開場 13時30分 14時より 15時30分頃まで
会場:岩瀬大町通り 慶集寺 琳空館(森家土蔵群・酒商 田尻本店 向かい)
お勤め:正信偈( お数珠をお持ちください )
法 話 : 慶集寺住職 河上朋弘
法 題 「 揺れ動くこころとからだを定める南無阿弥陀仏 」
家庭や社会での日常生活のなかで、だれでも無理なく勤められるのがお念仏の教えです。その実践のはじめの一歩を踏み出すきっかけにしていただけるように、なるべく具体的に、わかりやすくお話ししたいと思っています。
みなさまお誘い合わせのうえ、お参りください。
琳空館の床暖房をあたためて、お待ちしております。
Photography by Kenji Ishiguro
只今『 響く仏法-ほとけのおしえ- 』を、鋭意執筆進行中です。
新時代の幕開けに、どうぞお読みください。