浄土真宗の根本聖典・浄土三部経のひとつ『仏説阿弥陀経』には、 末法の世界には避けがたい五つの汚れ「五濁(ごじょく)」があらわれると記されています。
まず一つ目が 劫 濁 ( こうじょく )
疫病や飢饉、犯罪や戦争などの社会問題が増大し、時代そのものが汚れている状態をいいます。そんな時代にあっては、すべてのものが影響下にあり、汚れに染まらないわけにいきません。
次の二つ目が 見 濁 ( けんじょく )
汚れた時代においては自然に反する誤った価値観が当然のようになり、邪(よこしま)な思念が常識として蔓延(はびこ)り、思想の乱れがあらわれるといいます。
それに伴って起きる三つ目が 煩 悩 濁 ( ぼんのうじょく )
怒り、腹立ち、妬み、嫉み、欲多く、煩悩が盛んになって、悪徳が横行するといいます。
そして四つ目が 衆 生 濁 ( しゅじょうじょく )
人の道を踏み外すような振る舞いが横行し、心身ともに、人間の資質が低下していきます。
結果として現れる五つ目が 命 濁 ( みょうじょく )
命がどんよりと濁って、本来の輝きを失っていくといいます。 生命が軽んじられて、生きることの意義が見失われ、人生が虚しいものになっていきます。
まさに昨今の世界の状況を見渡すと、五濁悪世の時代を感じずにはいられません。
一寸先は闇と不安になって、この世は闇だと閉塞し、お先真っ暗と絶望しがちな、現代社会です。
私たちが生きているこの世界を仏教では 娑婆(しゃば)といい、 忍土(にんど・苦しみを耐え忍ばなければいけない場所)ともいいます。