【 無 分 別 智 】


人間の根源的な性質である「 分別心 」は、この世界を二つに分けて認識します。

上があるから下があり、右があるから左があり、前があるから後があります。

勝とうとすれば、負けることも必ずあるし、

得したいと思うところには、損することも、必ず起こります。


物事の有様をあるがままにみるならば、

すべてのものごとは何一つとして、単独で生起し、独立して存在するものではなく、

どんなものも相互に依存しながら、関係性のなかに在ることを知ります。


すべてのものごとは本来、さまざまな関係性のもとに、つながっているのです。

関係性から断たれてあるものはなく、すべてはひとつにつながっているのです。



正解が無いならば、不正解も無く、多数派がいなければ、少数派もいなくなります。

勝ったり負けたり、損したり得したり、善かったり悪かったり、泣いたり、笑ったり、

どちらも経験できて、どちらも経験せざるをえないのが、私たち人間なのです。



相対性の境を越えて「 すべてはひとつ 」と見ぬかれたその人は、

真偽の判別を越えて、超然としてある「 真実の人 」として、
善悪の区別を越えて、超然としてある「 善き人 」として、
美醜の差別を越えて、超然としてある「 美しき人 」として、

煩悩の滅せられた境地「 涅槃(ニルバーナ)」を体得し、
人間でありながら「 仏(ほとけ)」であることを、その身に体現されました。


一切の存在を「 ありのまま 」に見て、誤った偏見で判断しない。

人間の通常意識を超越した、そのような知性を「 無分別智(智慧)」といいます。



>>> 次項

>>> 目次