そんなシッダルタを案じて父王は、出家への関心をどうにか封じ込めさせようと、
高貴な家柄に生まれ育った美しい女性と見合いをさせて、シッダルタに結婚を勧めました。

周囲が思うようには気の進まないシッダルタでしたが、父王の望みどおりに結婚をして、
その後十年ほどしてからは、一族にとっては待望の第一子男児も授かりました。

一般的に見れば、幸せそのものの、安定した家庭生活の時期なはずです。
けれどもそんななか、二十九歳のシッダルタは、自ら出家の覚悟を決めるのです。


王子時代の生活を共にしていた愛馬と従者に別れを告げて、
王族のみが身につけることのできる、立派な衣服を脱ぎ捨て、装飾品を取り、靴を脱ぎ、
祖末な布切れ一枚を身に巻き付けて剃髪し、出家修行者「シャモン」となったシッダルタ。
まさに無一物での旅立ちです。

王位継承者として将来の地位や名誉が約束されて、
周囲からの人望に厚く、美しい妻に可愛い子供の待つ家庭があって、
誰もが羨むような恵まれた環境にあったはずのシッダルタが、
なぜ周囲の反対を押し切ってまで、なぜすべてを投げ捨ててまでも、
出家しなければいけなかったのでしょうか?

「四門出遊」と題されて伝えられる若きシッダルタのエピソードに、
その動機の一端をうかがい知ることができます。



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